L.Depth クリアしたので取り急ぎまとめ①

はきかさんの新作R18同人ゲーム『L.Depth』をクリアしました。

そして感動のまま記事を書こうと思った次第です。

 

・本編に至るまで

これについて、考察と感想を交えながら整理していこうと思います。ほぼ自分用。

初回クリア時点での取り急ぎのまとめであり、また、はきかさんの過去作を全てクリアしたわけではないので(『アサイラム』はこれからプレイする予定)、正解とは異なる文脈が混じっているかもしれません。

その辺はあしからず。

 

ネタバレ注意。

 

 

 

1.〈赫の一輪〉とストロウ病について

悪意をもって魔物を殺しながらも、その行為を彼らに対する「救済」であると偽る人間の集団〈赫の一輪〉。

少なくとも上層部の者達は魔物に対する自身の悪意・憎悪、嗜虐性を自覚している。そして一応、末端の者達にはそのことを知られないようにしていた。

【情報:「救済記録」】

【アイテム:「濁った赤の紙」「薄赤い花」】

 

殺害方法には、魔物のみ感染する古き病「ストロウ病」を宿した感染源たる化物(異形)を利用していた。その個体は地下の施設にて磔にされており、組織の者達からは「神性」と呼ばれている。

上層部の者達は「神性」もまた憎むべき魔物の一種であろうことを察しているが、それは承知の上で利用している。磔にされているため身勝手な行動は不可能、人間は古き病の影響を受けない、などの要素が好都合だったからだと思われる。

あるいは、磔にしたのも〈赫の一輪〉の手によるものと考えられる。

【情報:「磔の異形」】

 

破滅的な赤い光を発する「神性」に近づくだけで魔物は苦痛を感じ、やがて肉体が崩れて――ほどけて――絶命する。加えて、心を乱す幻を見ることもある。

組織の者達はその光(古き病の力)を、悪しきものを討つ「神聖なる祈り」と呼んでいた。また、特殊なオブジェクトを配置して媒介とすることで効力は落ちるものの、その力を各地点から部分的に放射することも可能であるようだ。

各所で見られる星芒形の紋章は祈りの力の存在を暗示している。そしてストロウ病の初期症状は、瞳孔の形状が星芒形に変化することである。また、症状の段階によっては治療も可能である。

古き病とされるのは、現代ではもう存在しないものと考えられているからだ。今や魔物と人間は共存している。そのため、魔物にとって非常に危険な疫病であるストロウ病は撲滅されたのだと思われる。しかし〈赫の一輪〉は感染者の一体(「神性」)を地下の施設に保存していた。その動機は、やはり魔物に対する悪意である。

【情報:「汚れた手帳」】

【アイテム:「記事の切れ端」】

 

感染源たる「神性」の力は強大であり、その影響力は地上にまで及んでいた。そして地下施設の真上にあるのが、今作の主要な舞台「館」の建てられた土地である。

そこに移り住んだのがアルシナート一家だった。

【情報:「書き残し3」】

 

 

2.アルシナート一家とその血縁関係について

はじめに主要人物を簡単に整理する。

注意:「障害者」というワードを便宜的に用いるが、筆者の考えは異なるので、それに関しては後述する。

 

ガートルード・ロング:

 人間の女性。人間達の暮らす村の村長を務めている。

 娘のノラとは一般的な母娘関係である。

 魔物を「悪」と認識している。

ノラ・ロング:

 人間の女性。ガートルードの娘。後にウィルと結ばれ、アルシナートと改姓。

 三人の子どもを出産する。

ウィル・アルシナート:

 魔物の男性。児童向けの絵本作家。ノラと出会い、愛し合う。

 自分の正体を隠している。館に引っ越した後、ストロウ病に感染する。

イネル・アルシナート:

 魔物の女性。アルシナート家の長女。軽度の知的障害者である可能性(後述)。

 館に引っ越した後、ストロウ病に感染する。

ミセリ・アルシナート:

 魔物の女性。アルシナート家の次女。病弱であり、成長障害者である可能性(後述)。

 館に引っ越した後、ストロウ病に感染する。

アヴァ・アルシナート:

 魔物の男性(?) アルシナート家の末っ子。まだ赤子である。

 館に引っ越した後、ストロウ病に感染して死亡。

 

人間達の暮らす村の女性〈ノラ・ロング〉は、世界的なマナの問題により近年ではあまり見られなくなった男性の〈ウィル・アルシナート〉と出会い、結ばれる。

彼は児童向けの絵本作家である。また、実は「夢魔」という種族の魔物である。そして、妻のノラを含め村の人間達はその事実を知らなかった。彼は自身の正体を伏せていたということになるが、当時はまだ魔物と人間の共存は達成されておらず、偏見が残っていたのかもしれない。

少なくともノラの母親である〈ガートルード・ロング〉が魔物を「悪」と認識していたのは確かである。

だが、ノラがウィルを愛したように、魔物の彼が人間の彼女を純粋に愛したのもまた事実である。

 

やがて二人の間に子どもが生まれる。長女の〈イネル〉、次女の〈ミセリ〉、末っ子の〈アヴァ〉である。

しかし、いずれも人間ではなく、父親と同じ魔物「夢魔」としての生を享けていた。ノラを含め村の人間達はその事実を知らなかった。そしてイネルとミセリも、自分自身が魔物であることを自覚していなかった。

自身の正体を伏しているウィルだけは把握していたのではないかと思われるが、作中で明言はされていない。

 

イネルは学力が劣っており、それは文字の書き方を改めて母親に教わろうとするほどであった。故に、軽度の知的障害者である可能性が考えられる。そのため絵本の内容をうまく理解することができず、ただ不気味であると恐れていた。

また、ミセリは元々病弱で成長の遅い子であり、その身体は「心配になるほどに」細く小さかった。故に、成長障害者である可能性が考えられる。運動が不向きな彼女はいつも部屋の中におり、汚れることのない靴を履き続け、小さな人形を友としていた。しかし、姉とは異なり絵本を楽しむことはできた。

末っ子のアヴァに関してはまだ赤子であったため、どのような人物であったのかは特に語られていない。あるいは語られていないということ自体が、アヴァには特筆するような障害はなかったということを意味しているのかもしれない。

【情報:「何者かの日記3」「何者かの日記4」】

 

姉妹ともに障害を抱えている原因は、魔物と人間という異種族同士の子どもである故なのか、それとも残酷な偶然に過ぎないのか――現時点では、その辺りは不明である。筆者の見落としがあるのか、もしくは本作中では語られぬ何か別の要因が関係しているのかもしれない。

 

そして、以下は筆者の個人的な考察だが、自分の中では最も有力な説である。

あるいは「障害」ではなく、魔物としての「特性」が現れた結果であるとも考えられる。魔物は非常に長命(不死?)である故に、人間と並べて比べた場合、成長のスピードは相対的に遅いものとして捉えられてしまう可能性がある。

そのように考えてみると、イネルの学力が劣っているということ、ミセリの身体の成長が遅いということにも合点がいく。それらは同年代の人間を基準とした見方であり、彼女達は魔物として順当に育っていたに過ぎない。

母親のノラですら子どもが魔物であることを知らなかったので、彼女含め周囲の者達が誤解しても無理のない話である。

「深みの部屋」にて発生する会話で、イネルはかつての自分は愚鈍であったと語り、ミセリはかつての自分は病弱であったと語る。これは、彼女たち当人も自身が魔物であることを知らないためである。

とはいえ魔物がどのように成長していくのか、はきか氏は今作、あるいは過去作においても恐らく明示してこなかったと思われるので、以上の考察が成立するか否かは実のところ不明であるという点を注意されたい。

 

3.アルシナート一家が館に移住した経緯

当初、アルシナート一家はノラの故郷である人間達の村にて生活を営んでいたが、やがて自らその地を去ることに決めた。

ノラはその理由について「村の皆にはたびたび迷惑をかけていたから」と書き残している。推測するに「迷惑」の原因となったのは、やはりイネルとミセリの存在である。彼女達は人間とは異なる魔物であり、加えてその自覚もなかったために、どうしても問題を起こしてしまうことが多々あったのだろう。

あるいは直接的に迷惑をかけていたというわけでなくとも、先述したように姉妹は同年代の子ども達よりも能力が劣っていると捉えられていた。ノラはそのことで居心地の悪さを感じていたという可能性も考えられる。

また、ウィルが今や世界でも数少なくなった男性であるということも大きく関係している。

 

彼女の母親であり村長でもあるガートルードは、村を去りたいという娘の要望をなかなか認めようとはしなかった。ノラはその理由について「村長は私の母親。心配しないわけがない」と書き残している。しかし彼女の推測する「心配」と、実際に母の胸中にある「心配」は異なる内容のものだったと思われる。

ガートルードはウィル、そして風変わりな彼の子ども達の正体は魔物なのではないかとずっと疑っていたが、確かめる術を持たなかった。とはいえ、その疑念がある故に、自分の娘が目の届く範囲から離れていくことを認めようとはしなかったのだろうと思われる。

しかし、彼女はある時、星芒形の祈りの力がある館の噂を耳にする。そして、アルシナート一家をその館に住まわせることで、娘を欺く悪の正体を暴くことができると企む。

こうしてノラは門出の許しを得た上に、移住先の立派な館まで紹介された。彼女は母親の厚意に感謝し、館での生活が始まった。

【読み物:「ノラへの手紙」】

【オブジェクト:館一階の文書】

 

ガートルードを除く村人達は、アルシナート一家の移住の理由を「ウィルが数少ない男性である故に、様々な問題の可能性が考えられるからだろう」と解釈している。そのため、彼やその子ども達の正体が魔物であるという疑いのあることは知らなかったのではないかと考えられる。

また、先述したように館の力の源泉は地下の施設に保存されている「神性」の存在であるが、ガートルードも流石にそのことまでは知らなかったのだろうと思われる。また、魔物と人間の共存する現代において〈赫の一輪〉という集団(組織)は既に解体されているか、少なくとも本編に登場する施設は放棄していると考えられる。そこには「神性」のみが残されており、今も尚その影響力は地上にまで及んでいたということである。

 

4.悲劇の始まり

ガートルードの企ては成功した。館に移住してから程なくして、ウィル、イネル、ミセリ、そしてアヴァの瞳に五芒星が現れる。地下に保存された「神性」の発するストロウ病の初期症状である。なかでもウィルは強力な「上位の夢魔」であり、それ故に「神性」の影響もまた強く受けてしまう。一番最初に体調を崩したのは彼であり、その身体は日に日に痩せ細っていった。

【読み物:「何者かの日記1」】

じきに彼らは皆、苦しみ、今にも息絶えてしまいそうな顔をするようになった。人間であるノラだけが、家族の苦痛を理解してあげることができなかった。

【読み物:「何者かの日記5」】

そして決定的な時が訪れる。アヴァはまだ赤子である故に、苦痛に耐える力もまだ幼かったのだと思われる。居ても立っても居られないウィルは泣き止まぬ我が子を抱えて、遠くの町にいる「呪いを解く魔法使い」の元へと走り出す。そして遂に町へと至る最後の洞窟を通り抜けようとしたその時、出口が塞がれていることを知った。

彼は何度も「助けてくれ」と叫び続けたが、出口の向こう側にいる者に聞き入れられることはなかった。やがて彼の腕の中でアヴァは息絶えた。

推測するに、ストロウ病の症状によって身体が崩れてしまったのだと思われる。のちに館に帰ってきたのはウィルのみであるという点、本編中の主人公が藁や稲などを目にして不快感を抱く点(彼は「似ているからだろうな」と述懐する)、これらはアヴァの最期を示唆しているのだろう。

 

また彼は、出口を塞いだのは人間達――妻の母親であり村長でもあるガートルードであり、自分は「裏切られたんだ」ということを察していた。そして、「皆、それぞれ守りたいものがあったのだろうから、これは悪意ではないのだ」と信じようとするが、だからこそ行き場の無くなってしまった憎しみと絶望に陥った。

彼は館に帰ると、一つの作品を残して目覚めなくなった。程なくしてイネルとミセリも姿を消した。こうしてノラだけが現実に取り残された。

【手記:「覚えのない記述」】

【読み物:「何者かの日記6」】

【読み物:「破れた絵本」】

 

ウィルの残した「一つの作品」とは、我が子を喰われた黒猫の復讐の物語『駄作』であると考えられる。あるいはアヴァの悲劇の顛末を描いた『ゾラムと青い灯り』の可能性もある。強いて言うならば、彼の作品の特徴である「青い世界」が描かれているのは後者であると思われる。

彼は上位の夢魔としての能力を発動し、現実を侵食する悪夢を生み出し、子ども達と共に没入した。それは「守るための悪夢」だった。これ以上、我が子を悲劇ばかりの現実に奪われぬようにしたのだと考えられる。また、悪夢の奥底にある「深みの部屋」に隔離することによって、ストロウ病の進行を食い止めようとする意図もあったのかもしれない。

悪夢とは現実に影響を与える幻のようなものであり、本来、個人が意図的に生み出せるような代物ではない。悲しみや憎しみ、死などの負の要因がトリガーとなって発生するとされている。だが、館を取り巻く悪夢は例外であり、それはウィルが強大な力を持つ上位の夢魔であるからこそ成し得たことであった。

【読み物:「駄作」】

【読み物:「破れた絵本1~4」】

 

時が経ち、やがて「館の魔物の討伐依頼」が出回るようになる。魔物は人を攫い、監禁しているという噂もあるが、これはウィルが生み出し押し広げる悪夢の世界に飲み込まれる者がいるということを意味している。実際に多くの冒険者が失踪を遂げており、本編の舞台では彼らの死体や手記が散見される。手を下しているのは悪夢を徘徊する「ゾラム」という魔物であるが、それを生み出したのは「いずれかの夢魔」である。

冒険者ケイス・パールエッジは依頼を受け、館へと足を運ぶ。